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住宅ローンの取り扱い

住宅ローン付個人再生を利用した場合、住宅ローンが減ることはありませんが、場合によっては、返済方法を変えることもできます。具体的な類型は次のとおりです。ア~ウについては、住宅ローン債権者の同意は不要です。

ア そのまま型
当初の契約に沿ってそのまま支払いを続けていくやり方です。一番利用されている類型です。この場合、個人再生申立後も引き続き返済を続けていきます。

イ 期限の利益回復型
すでに住宅ローンの返済が遅れている場合に利用する類型です。この類型では、個人再生の手続中は、住宅ローンの返済を止め、個人再生の手続が終了し、住宅ローン以外の借金について、返済を開始していくときに、止めていた住宅ローンを上乗せして返済を開始していくやり方を取ります。具体的には、住宅ローン以外の借金を返済する期間のことを一般弁済期間といい、原則3年間、場合により5年間となっておりますが、この期間にこれまで遅れていた分を返済することになります。約定で返済することになっている部分ももちろん返済します。したがって、この類型を取りますと、住宅ローン以外の借金を返済する一般弁済期間中は、①住宅ローン以外の借金、②住宅ローンの遅滞部分、③住宅ローンの約定分、の3つを返済することになるため、それなりに負担が増します。

ウ 返済期間延長型
この類型も、すでに住宅ローンの返済が遅れている場合に利用する類型です。この類型によれば、最大で10年間返済期間を延長することができます。ただし、70歳を超えることはできません。この類型は、厳密には、上記一般弁済期間中に、元本の一部猶予があるものとないものに分かれます。元本の一部猶予がある場合とは、元本を一部だけ支払って残りは一般弁済期間後に回すことができるのです。

エ 同意型
住宅ローン債権者の同意に基づいて返済方法を決める類型です。この類型によれば、どのような返済方法も可能になります。銀行が全面的にリスケ(リ・スケジュールの略で、もともとの返済計画を見直すことを指します)をしてくれる場合には、同意型によることも多いです。例えば、70歳を過ぎるような場合でも住宅ローン債権者がOKと言ってくれればそのような返済方法も可能となります。

持ち家を失わなずにすむ「住宅ローン付個人再生」

住宅を持っている方は住宅ローン付個人再生という方法があります。この方法を使えば、住宅は残したまま、一般の借金を大幅に減らすことができます。ただし、住宅ローンが減ることはありません。住宅は残したいので、住宅ローンは支払っていくが、一般の借金についてはこれ以上返済を続けていくことが厳しいという方には、とても便利な制度です。この制度は住宅ローンの返済を滞りなく続けている方だけでなく、すでに住宅ローンが遅滞している方、住宅ローンしか負債がない方などでも利用できます。注意が必要なのは、申立時点での住宅ローンの残高と住宅の時価がどのようになっているかという点です。

オーバーローンであれば問題ないのですが、住宅ローンの残高がわずかで、時価がそれなりにある場合、余剰部分が生じるときがあります。その場合、余剰部分は清算価値に組み込まれますので、余剰部分が何百万円もある場合には、個人再生を利用することが困難となることもあります。例えば、住宅ローンの残高が1500万円、時価が2000万円という場合、売れば500万円の利益が残るのであるから、この金額に相当する部分は返済しなさいということになります。この場合、仮に一般の借金が800万円という場合、最低弁済額基準では160万円を支払えばよいのですが、清算価値基準では500万円となり、この金額を支払わなければならなくなります。このように、住宅ローン付個人再生を利用する場合、不動産の査定を取り、時価がどの程度かが非常に重要になってきます。

住宅ローン付個人再生を利用できるのはこんな場合
この制度が利用できるためには、一定の要件をクリアする必要があります。

①建物について
まず、建物について、自分が生活のために使用している建物でないといけません。例えば投資用の不動産などは利用できません。
②土地について
次に、土地については、住宅のために使用されている土地あるいは土地上の地上権・借地権である必要があります。
③貸付金について
そして、貸付金について、いくつか制限があって、まず、住宅の建設・購入・改良のための貸付金である必要があります。「改良」とは、例えば、修繕のために借り入れたというような場合も含みます。また、分割払いとなっていないといけないという制限もあります。こういった要件すべてを満たして初めてこの制度が利用できるのです。

住宅ローン付個人再生は、住宅ローンの支払いを止めることも認められている非常に強い制度ですので、利用できる場合が限定されているのです。では、今は生活していないが、数年後に戻ってくるという場合はどうなのでしょうか。この点は、解釈に委ねられており、実際には、裁判所に申し立てた後、裁判所・再生委員と協議することになります。たまたま単身赴任で、数年後には自宅に戻ってくる蓋然性が高いような場合には、要件を満たす可能性が高いですが、そうではなく、購入時から投資用で購入して、いつ戻るかもわからないというような場合には、要件を満たさない可能性が高いでしょう。

あなたの返済金額はこう決まる!(給与所得者等再生の場合)

給与所得者等再生の場合、前述の最低弁済額基準及び清算価値保障基準に加えて、次に述べる可処分所得基準も加わり、この3者を比較して一番高額な金額が返済額となります。

可処分所得基準
可処分所得基準とは、2年分の可処分所得を算出し、この2年分の可処分所得以上の弁済をしなければならないという基準です。可処分所得とは、再生計画提出前の2年間の再生債務者の総収入から税金・社会保険料を引いたものを2で割った額から申立人及びその被扶養者の1年分の生活費を控除した残りをいいます。1年分の生活費の算出基準については、政令で定められております。例えば、妻と子供2人の4人家族の場合、1年間の生活費は350万~400万円程度です。

実際には、この基準が厳しいため、給与所得者等再生を利用することが少なくなっています。具体例で述べますと、年収700万円(手取り550万円)、生活費400万円とすると、1年間の可処分所得は、550万円-400万円=150万円となり、2年間では300万円となります。負債額800万円、清算価値200万円の事例で考えますと、最低弁済額基準=160万円、清算価値保障基準=200万円、可処分所得基準=300万円となり、一番高額である300万円が返済額になります。可処分所得額を算出するに当たっては、「可処分所得額算出シート」というものを作成します。

まとめますと、小規模個人再生→①最低弁済額基準、②精算価値保障基準のうち最も高い金額給与所得者等再生→①最低弁済額基準、②精算価値保障基準、③可処分所得基準のうち最も高い金額が返済額になるということです。

返済が困難になった場合にも救済措置がある
再生計画に沿って返済がなされない場合には、債権者の取り消しの申し立てにより、再生計画が取り消され、元の負債額全額を返済しなければならないこともあります。しかし、再生計画案が認可され、実際に返済が始まったとして、途中でリストラにあい、再生計画に沿った返済が困難となったような場合には、返済期間の延長を申し立てることができます。この場合、2年を超えない範囲で返済期間を延長できます。さらに、すでに4分の3以上の返済を終えている場合には、再生計画に沿った返済が極めて困難であること、清算価値保障原則に反しないこと、計画の変更も極めて困難であることといった要件を備える場合には、残債務を免除してもらえることもあります。これを「ハードシップ免責」といいます。

あなたの返済金額はこう決まる!(小規模個人再生の場合)

返済額は、基本的に借金の金額がいくらかによって、次のように決まっております。もっとも、返済額を決めるに当たっては、上記基準以外にもいくつかの基準があり、それらをあわせて最終的な返済額を決めます。この点は、小規模個人再生と、給与所得者等、再生とで基準が異なるので、以降では分けて考えます。

小規模個人再生の場合
小規模個人再生の場合、最低弁済額基準に加えて、次に述べる清算価値保障基準という基準も加わり、両者を比較して高額な金額が返済額になります。

清算価値保障基準
破産手続がなされた場合に、債権者に分配される総額のことを清算価値といい、個人再生の場合には、この清算価値を下回る弁済額は認められておりません。清算価値の基準時は再生計画案の認可決定時です。例えば、生命保険を解約したら250万円の解約返戻金が戻ってくるという場合、250万円が清算価値になります。仮に、負債が1000万円あるとすると、上記の最低返済額基準では2割の200万円が返済額となりますが、清算価値基準では250万円が返済額となり、両者を比較して多いほうの250万円が最終的な返済額になります。なお、個人再生の場合、資産を処分しなくてもよいと言いましたが、このことと精算価値保障基準における返済額の算出とは別のことなので注意が必要です。

つまり、仮に資産を処分すればまとまったお金になるのであれば、その程度の金額は支払うべきであるというのが精算価値保障基準の考え方です。生命保険の解約返戻金が250万円であるという場合、この生命保険を解約する必要はなく、ただ、返済額が250万円になるということです。精算価値を算出するに当たっては、「精算価値チェックシート」というものを作成します。参考までに同シートを添付します。計算例の場合、清算価値は185万円となりますので、最低弁済額基準と比較して、清算価値185万円のほうが高ければ、185万円が返済額となります。

大切なのは「再生計画案」の立案

再生計画案については、返済額総額をもとに、各業者の借金の金額に応じ按分計算で作成します。例えば、負債額が900万円で、その内訳がA社540万円、B社180万円、C社180万円であった場合、返済額が2割の180万円とすると、A社108万円、B社36万円、C社36万円という形で再生計画案を作成します。そして、この金額についてどのように支払っていくかについては具体的な決まりはなく、単純に同額の分割返済とする場合もあれば、ある業者につき先に支払うという形もあります。また、返済額が僅少な場合には、3か月おきにまとめて支払うということもあります。

もっとも、あまり特定の債権者を優先するような再生計画案ですと、再生計画案に反対されるおそれもありますので、その点は、慎重な判断が必要です。参考までに返済方法の一例を示します。均等に返済をしていく場合の一例です。また、再生計画案の本文は前ページのような形です。中立後、代理人の弁護士のほうでは、再生計画案の作成などいろいろとやることがありますが、では再生債務者本人がすることはなんでしょうか? 答えは「履行テスト」です。この「履行テスト」とは、積み立てのことで、将来3年間(場合により5年間)にわたって返済を続けていくことができるかをテストするというものです。

具体的には、例えば、借金が900万円あるとします。この場合、最低弁済額基準によれば2割の180万円を返済することになります。このあと述べる精算価値保障基準、可処分所得基準は考えないとします。この180万円を3年間で返済していくとすると、毎月の返済額は180万÷36=5万円となります。この5万円を手続中積み立てるというものが「履行テスト」と呼ばれるものです。積み立ての方法ですが、東京地方裁判所のように再生委員を選任する場合には、再生委員が積み立て用の口座を作りますので、この口座に毎月所定の日に振り込みにより積み立てます。この積み立ては申し立てから認可決定が下りるまで続きますので、標準スケジュールによれば約半年間続きます。

回数でいうと6回前後です。再生委員を選任しない場合には、代理人弁護士あるいは本人が別口座を作り、そこに積み立てをしていきます。細かい手順は裁判所ごとに異なりますので、その点は中立前に確認することが必要です。では、この積み立てを遅滞あるいは不履行した場合、どうなるのでしょうか。この点については、遅滞あるいは不履行により、再生計画案が認可されないこともあるので要注意です。表「個人債務者再生手続標準スケジュール」の後半に「認可の可否に関する個人再生委員の意見書提出」と記載されていたのを覚えていますか。

この意見書は、債権者の賛成か反対かの回答を踏まえて再生委員が意見を述べるのですが、ここで毎月の積み立てをきちんとしていない場合には、わずか半年でもきちんと履行できないようなものが3年間(場合により5年間)返済を続けていくことはできないということで、「認可反対」の意見書を出す可能性が高いのです。再生委員が「認可反対」の意見書を出すと裁判所もその意見に沿って「不認可」の決定を下す可能性が高いので、結果的に申し立ては認められないことになります。そういう意味で、この履行テストは、手続中本人がする唯一かつ非常に重要な手続なのです。

申し立てから認められるまでの流れ  

申し立てから再生計画案が認められるまで、おおよそ半年程度かかります。手続のほとんどは弁護士のほうで行いますので、本人が行うことはほとんどありません。本人が行うことは、申立前に必要書類(住民票、通帳、保険証券等)を揃えて弁護士に送ることです。申立後、再生委員という手続を監督する方が選任された場合には再生委員と、再生委員が選任されない場合には裁判官と面談を行います(裁判所によっては裁判官との面談も不要な場合もあります)。ここで申し立てに問題がない場合には、裁判所が開始決定を下し、具体的に手続が進みます。開始決定後、まずやることは負債額を確定することです。

申立人側では、各業者についていくらの借金があるのか申立書に記載しますが、この金額について、各業者が違うと考える場合には、各業者が考える債権額を届け出ます。そして、その金額について、お互いが主張を行い、最終的にまとまらなければ、裁判所が決定します。各業者は、開始決定日までの利息・遅延損害金をつけてくることが多いので、申立人側かその金額を争うと、裁判所が決定を下す段階まで進むことも多いです。負債額が確定後、申立人側において、どのように返済を行っていくのか具体的な返済計画を記載した再生計画案を作成します。再生計画案については、次項で詳細を述べますが、個人再生の手続において一番重要な手続になります。

この再生計画案作成後、小規模個人再生の場合には、この計画案の賛否について、議決を取り、債権者の過半数(数と金額双方)の賛成があって初めて認可となります。給与所得者等再生の場合には、この議決は不要です。個人再生委員が選任される場合には、同委員の、認可してもよいという意見書も必要です。同委員の認可の意見書が出た後、最終的に裁判所が認可決定を出すという流れになります。認可決定後、約1か月後の確定を経て実際の返済が始まります。

標準スケジュールでいいますと、申し立てから約8か月後に返済が始まることになります。手続中、書類の作成等必要な作業はほとんど弁護士が行いますが、本人がやることとしては、「手続中、本人は何をするのか」でも述べますが、毎月の積み立てがあります。この積み立ては、今後3年間(場合により5年間)きちんと返済が続けられるかをテストするものです。この積み立てが滞った場合には、再生委員は認可してもよいという意見書を出さず、裁判所も認可決定を下してくれませんので、この点だけはきっちりやってください。無事、認可決定が下りると前ページのような認可決定書が裁判所から送られてきます。

個人再生2つのパターン

個人再生には2種類あり、それぞれ利用できる人が多少異なります。一つは、小規模個人再生といわれるもので、利用者は、「将来において、継続・反復して収入を得る見込みがあること」が必要とされておりますが、この要件は、それほど厳しくなく、収入が月によってある程度変動があっても利用できます。利用できる人は、主に会社員、公務員、年金生活者、自営業者などです。もう一つは、給与所得者等再生と呼ばれるもので、前記の要件のほか「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるもの」という要件も必要になります。

この要件は比較的厳密なため、自営業者が利用することは難しいです。利用できる人は、主に会社員、公務員、年金生活者などです。実際には、個人再生の利用者の多くが小規模個人再生を利用しております。この理由は、後でも述べますが、給与所得者等再生の場合には、返済額が増えることが多いからです。統計では8割以上が小規模個人再生を利用しています。個人再生を利用するメリットが大きいのは、次のような方です。

①住宅ローンを抱え、住宅はなんとしても残したいが、その他の借金を減らしたい会社員→住宅ローンを残したいという場合、住宅ローン付個人再生が最適です。

②負債が大きく任意整理ではほとんど減らないが、自己破産となると地位が危なくなる公務員→公務員の場合、官報などで自己破産を知られてしまい、今の地位を失うこともあります。その場合、個人再生であればそれを免れられる可能性があります。

③会社経営をしており、会社はそのまま残したいが、個人の負債を減らしたい会社経営者→会社の負債がないか、あっても返済が可能ということで、履行可能性が認められれば、個人再生により個人の負債のみ減らすことが可能です。

「個人再生」でムリなく人生リセット!

ここでは、個人再生について概略を説明いたします。さきで述べたように、個人再生とは、負債のおおむね1~2割を返済すれば、残りは免除となる制度です。同制度を利用するためには裁判所に個人再生の申し立てを行い、裁判所の認可決定を得ることが必要です。標準的なスケジュールで、申し立てからおおよそ半年くらいで認可決定となり、その後3~5年で返済をしていくことになります。では、個人再生を選択するといくらになるのでしょうか。この点、返済額を決めるに当たっては、基準がいくつかあるのですが、一番基本となる基準によると、次のようになっています。この基準のことを最低弁済額基準といいます。

例えば、あなたの借金が400万円であったとすると、返済額は100万円となります。借金が800万円の場合、返済額は160万円となります。まとめますと、①借金が500万円未満の場合には、個人再生を利用するメリットがあまりないこともありますので、任意整理を利用すべきか否か慎重な判断が必要です。通常、個人再生の場合のほうが、弁護士費用が高く、裁判費用もかかるため、借金が100万~200万円のあたりですと、トータルで支払う費用が、任意整理より個人再生のほうが高くなる可能性が高いです。②借金が500万円以上の場合には、1~2割を返済すればいいことになり、個人再生のメリットが大きいので、通常個人再生を利用することになります。

とりわけ、借金が3000万円を超える場合には、―割を返済すればよく、メリットは非常に大きいです。個人再生が認められ、実際の返済が始まった場合、返済期間は原則3年となっています。この期間中、遅滞なく返済を行って予定どおり返済した場合には、3年経過時点で残りは免除となります。残りが免除になるとは、残りの借金は返済しなくてよいということです。具体的には、もともと500万円の借金があり、それが個人再生により100万円に減ったとします。そして、この100万円を3年間で支払った場合には、その段階で残りの400万円については返済しなくてよいことになります。

注意が必要なのは、3年の間に返済が滞ったりした場合には、再生計画が取り消され、全額返済する必要が生じることがあるという点です。この点は「返済が困難になった場合にも救済措置がある」でも述べますが、いずれにしろ、この3年間は必ずきちんと返済をしてください。なお、返済方法ですが、基本的には、返済方法を記載した再生計画案に沿って返済をしていきますが、遅滞にならない限りは再生計画案と異なる返済をしても問題ありません。例えば、ボーナスなどで多少余裕が出たときに、前倒しで返済をするようなことも可能です。なお、返済期間について、特別の事情があれば5年間とすることもできます。